特集 砂糖文化を広めた長崎街道
市長からのメッセージ
今年6月、本市を含めた長崎街道沿い8市で共同申請をしていた「砂糖文化を広めた長崎街道~シュガーロード~」が日本遺産に認定されました。
長崎街道は、江戸時代に小倉と長崎を結んでいた57里(約228km)の街道です。当時、唯一外国との窓口であった長崎から、西洋の文化や技術に加え、貴重品だった砂糖が長崎街道を通って全国に広がりました。
多くの文物が長崎街道を行き交う過程で、菓子作りの技法などが沿道に伝わり、砂糖を生かした個性ある食文化が花開き、現在に続く銘菓の数々が生まれたのです。そんな長崎街道は、いつしか「砂糖の道」=「シュガーロード」と呼ばれ、今日に至っています。
本市には、その時代の息吹を感じる銘菓や歴史遺産が多数存在します。初秋の一日、シュガーロードゆかりの地に足を運んで伝統のお菓子を味わい、はるかな歴史に思いをはせてみませんか。
北九州市長 北橋 健治
お菓子を入り口に、歴史の奥へ
江戸時代に長崎街道がもたらした砂糖文化と、官営八幡製鐵所を中心に明治以降に急速に発展した工業。この2つの視点から本市の歴史をひもとくと、ここ北九州に独特の“甘いもの文化”が根付いた背景がより鮮明に見えてきます。明治、大正、昭和と、製鉄と石炭産業で栄えた本市には全国から労働者が集まりました。労働の疲れを癒す甘いお菓子を求める声に応える形で、個性的な銘菓が続々と誕生。江戸時代から続く砂糖文化が一気に開花し、現在に至っています。
今回の日本遺産認定が、身近なお菓子や歴史遺産を通して、地域の歴史を身近に感じる第一歩になれば、と願っています。いのちのたび博物館では、長崎街道にまつわる史料を常設展示しています。みなさんもぜひ、おいしいお菓子を味わいながら、歴史を楽しんでください。
いのちのたび博物館
学芸員 上野 晶子さん
本市のお菓子文化の歴史
▲福田屋「鶴の子」看板
※いのちのたび博物館所蔵
鶴の子
江戸時代から昭和後期まで続いた小倉北区米町の「福田屋」が小倉藩主に献上していた商品。和三盆(砂糖の一種)を固めた上品な風味を覚えている人も少なくないでしょう。
▲「豊国名所」に描かれている
三官飴
※いのちのたび博物館所蔵
三官飴
江戸時代、小倉北区室町の「三官屋宇兵衛」の店で壺(つぼ)に入れて売られていた、やわらかい食感の飴。小倉の名産として当時は全国でも有名で、土産品や贈答品として各地へもたらされました。
八幡饅頭(まんじゅう)
昭和初期、製鉄業でにぎわう八幡で創業した「鶴屋」の人気商品。白餡をカステラ生地で包む丸い焼き菓子で、「八幡」の焼き印が特徴。八幡饅頭は千鳥饅頭とよく似た形をしていましたが、それぞれの店の創業者は兄弟。どちらも近代産業を支えるお菓子でした。
現代に続く本市のお菓子文化
くろがね羊羹(ようかん)★
大正末期、官営八幡製鐵所で働く従業員向けの栄養補助食品として誕生したポケットサイズの羊羹。上白糖の強い甘みが、昼夜を問わず稼働する製鉄現場を支えました。
金平糖(こんぺいとう)★
ポルトガル語の「コンフェイトス」がなまって金平糖に。長崎から北九州に来て布教活動を行っていた宣教師ルイス・フロイスが織田信長に献上したのが、日本における“金平糖史”の始まりとされています。明治以降は、労働者の甘味としても重用されていました。
小菊饅頭(まんじゅう)★
手亡豆(白インゲン豆)の白餡と小豆餡を、すりおろしたとろろ芋と米粉の皮で包んだ一口サイズの饅頭。大正末期、街道沿いに住む漁民が蒸し饅頭を商ったのが始まりと言われています。
栗饅頭(まんじゅう)★
饅頭は「蒸し系」と「焼き系」に大別されますが、栗饅頭は後者のうちの一つ。江戸時代の海外貿易で製法が伝えられた焼き饅頭の皮で、栗と餡を包んだお菓子です。
※上記以外にもさまざまなお菓子が本市のお菓子文化をつくっています。
本市にあるシュガーロードゆかりの地を歩こう
福聚寺(小倉北区寿山町)★
1665年(寛文5年)、初代小倉藩主・小笠原忠真が菩提寺として創建した、由緒ある寺院です。江戸時代には小笠原家の御用菓子師が唐饅頭(餡をカステラ生地で包んだ焼き饅頭)を納めていました。
常盤橋(小倉北区室町)★
小倉城下の紫川河口に架かっていた大橋で、長崎街道の起点(終点)。参勤交代の一行やオランダ商館長はここから下関行きの船に。携行した献上品には砂糖も含まれていたと言われています。
木屋瀬宿(八幡西区木屋瀬)
江戸時代以前から遠賀川の舟運で栄えた長崎街道の宿場町。今も古い町並みが残り、当時の雰囲気が感じられます。
シュガーロードゆかりの歴史アイテムを見に行こう!
- | いのちのたび博物館 | 長崎街道木屋瀬宿記念館 |
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所在地 | 八幡東区東田2丁目4―1 | 八幡西区木屋瀬3丁目16―26 |
電話番号 | 093・681・1011 | 093・619・1149 |
開館時間 | 9~17時(入館は16時30分まで) | 9~17時30分(入館は17時まで) |
展示物 | 福聚寺を創建した小笠原忠真の 肖像画や常盤橋の礎石など。 | 明治時代、木屋瀬で売られていた ピータラ飴の包み紙など。 |
★=日本遺産に認定された本市の構成文化財
※ここで紹介しているものの起源やエピソードには、諸説あります。
この特集に関するお問い合わせ 産業経済局観光課 電話093・551・8150