北九州市政だより

NO.1415

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令和4年8月1日号 特集

特集
平和のまちミュージアム

〜伝えよう戦争の悲惨さ、平和の大切さ、命の尊さ〜

 戦後75年以上が過ぎ、市民の大多数が戦争を知らない世代となった今、戦争の悲劇は遠い過去のものになろうとしています。私たちは、どんなに時が過ぎようとも、今日の平和と繁栄が過去の戦争における多くの尊い犠牲の上に成り立っていることを忘れてはなりません。

戦争の体験談

戦争を知らない世代に、
戦争の悲惨さを語り伝えたい

黒瀬圭子さん写真
▲黒瀬圭子さん
(門司出身・絵本作家)

 太平洋戦争が始まった昭和16年(1941年)、私は小学3年生でした。空襲の恐ろしさは今も忘れません。防空壕で震えながら聞いた高射砲の爆音、関門海峡で機雷に当たり、水柱をあげて音もなく沈んでゆく船… 港では出征する兵士の見送りだけでなく、亡くなった兵士の遺骨の迎え入れも。しかし、悲しみを表に出すことは決して許されませんでした。私の3人の兄も、長兄は戦地で、次兄は空襲のさなかに、すぐ上の兄は学徒動員先のセメント工場で命を落としました。理不尽な戦争の実態を知ったのは戦後、大人になってから。あの時代を知る人が年々少なくなる中、戦争がどんなに悲惨で恐ろしいことかを子どもたちに語り伝えたいと絵本を出版しました。出征する兄を見送った駅で、母が兄の手を取って「元気で帰ってこい」と言った言葉が、今も耳に残っています。

館内写真
風船爆弾(模型)と戦時下の人々の生活

館内写真
甚大な被害があった八幡大空襲

館内写真
焼夷弾(横型)

館内写真
当時の教科書

館内写真
竹やりを持った少女の人形

館内写真
戦時下の暮らし(再現)

市長からのメッセージ

 私は、市長就任以来、核兵器のない、戦争のない平和な社会を築いていかなければならないとの思いを強く抱き続けてきました。平成22年には、平和に対する市の基本的な考え方を示す「非核平和都市宣言」を行いました。戦後75年以上が経過し、戦争の記憶が風化していくことが懸念されます。戦争によってもたらされた痛ましい不幸、そして平和の大切さ、命の尊さを次世代へ繋げていくことが私の責務であるとの強い思いから、「平和のまちミュージアム」を開館しました。私たちのいまの平和な暮らしが、多くの尊い犠牲の上に成り立っていることを決して忘れず、平和を求め続けていくことが大切です。戦争を知らない世代、特に、市の未来を担う子どもたちが、このミュージアムを訪れ、平和の大切さや命の尊さを考えることで、新しい未来を切り開いていただくことを心から期待しています。

北九州市長 北橋 健治

見て、触れて、追体験する展示

 ミュージアムが建つ場所は、かつて国内有数の兵器工場であった「小倉陸軍造兵廠(ぞうへいしょう)」があり、長崎に投下された原子爆弾の第一目標でした。館内には当時の暮らしを物語る日用品や、空襲にまつわる数多くの実物資料と、最新の映像・音響技術を使った展示を行っています。

プロローグ(米軍偵察写真)

 館内に入ると右側の壁全面に、当時の米軍機がとらえた小倉陸軍造兵廠の航空写真があります。昭和20年(1945年)8月9日、原爆投下第一目標とされていた場所に建つミュージアムの象徴的な写真から展示が始まります。

館内写真

戦前の北九州

 北九州のまちが日本を代表する工業都市として発展する様子と軍との関わりを紹介しています。小倉陸軍造兵廠をリアルに再現するプロジェクションマッピング(壁などに映像を投影する技法)もあります。

館内写真

戦争と市民の暮らし

 戦時下の一般的な家庭の暮らしや子どもたちの生活が分かる展示コーナー。防火すごろくや防空頭巾など実際に体験することもできます。通路の空間には「風船爆弾(7分の1模型)」も展示しています。

館内写真

広がる戦争と空襲

 市民を襲う空襲など被害の広がりを、地図や写真・実物資料などで伝えます。110本もの筒状の焼夷弾が束になった実物大模型爆弾のほか、空襲警報の音を再現するコーナーもあります。

館内写真

360度シアター

 昭和20年(1945年)8月8日に起きた八幡大空襲、翌9日原爆を搭載した爆撃機が小倉上空に飛来した後、長崎に向かった出来事を360度スクリーンの臨場感ある映像で追体験できます。

館内写真

終戦の混乱と戦後復興

 北九州のまちが復興の歩みを進める過程を資料と映像で紹介します。5分間の動画を見るだけでも、再生するまちの活気ある息吹が伝わります。

館内写真

エピローグ(平和の樹)

 最後のコーナーは、参加型体験展示。タッチパネルに感想を書き込むと、大画面上の大木の枝に、書き込んだ感想が「葉」となり、広がっていきます。

館内写真

施設概要

館内地図

小倉北区城内4-10 []
電話093-592-9300

開所時間
9時30分〜18時(入館は17時30分まで)※8月5日(金)〜9日(火)は20時まで
休所日
月曜日(祝・休日の場合は火曜日)、年末年始※8月8日(月)・15日(月)は開館し、8月16日は休館
料金、費用
一般200円 中・高校生100円 小学生50円(市民は7・8月は無料)駐車場は有料。詳細は問い合わせを。

戦争を知らない世代が、知らない戦争を語り継ぐために

小倉徳彦写真
平和のまちミュージアム
学芸員 小倉 徳彦

 時間が経過すればするほど、過去の戦争の記憶は失われていきます。平和のまちミュージアムは、こうした戦争の記憶を保存、継承するためにつくられた施設です。北九州のまちは昔、軍隊との関わりが深く、そのため戦争の影響を大きく受けたという歴史があります。ミュージアムの展示は、過去にこのまちで起きた出来事を語りかける、心に残るようなものになっています。このミュージアムに来て頂き、当時を生きた人々の経験や気持ちに思いをはせ、平和の大切さについて考える輪を広げてほしいと思います。

企画展「原子爆弾と模擬爆弾“パンプキン”」

 テーマに沿って、所蔵品や他のミュージアムからお借りした資料をもとに、企画展を実施します。

 8月28日(日)まで企画展「原子爆弾と模擬爆弾“パンプキン”」を開催中。米軍が原爆投下の練習に用いた模擬爆弾「パンプキン」について、多くの資料とともに紹介します。長崎原爆資料館からお借りした、貴重な実物資料も展示しています。

映画「祈り-幻に長崎を想う刻」上映と戦争体験を巡る対談

[日時]8月12日(金)13〜16時
[場所](小倉北区大手町)
※申込方法など詳細については問い合わせを。

この特集に関するお問い合わせ
平和のまちミュージアム 電話093-592-9300

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