北九州市政だより

NO.1436

文字サイズ

令和5年6月15日号 特集

特集
松本清張記念館25周年

 本市に生まれ、「砂の器」「日本の黒い霧」などの作品で知られる芥川賞作家・松本清張。1998年(平成10年)、彼の功績を称え語り継ぐために、松本清張記念館は開館しました。館内では、作品の紹介をはじめ、膨大な蔵書や原稿、書斎や応接室を忠実に再現した展示などを鑑賞することができます。緑に囲まれた静かな館内で、ゆっくりと松本清張の魅力に触れてみませんか。

700冊の著書を一覧展示した大迫力のエントランス

松本清張の画像

 松本清張は、1909年(明治42年)、現在の小倉北区で出生。19歳の時に印刷所に見習いとして就職、その後、朝日新聞九州支社で広告の版下を作る仕事をしていました。作家としての活動は42歳からという遅いスタートでしたが、44歳の時「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。49歳の時には「点と線」や「眼の壁」などがベストセラーとなり、社会派推理小説ブームを起こしました。その後も、82歳で亡くなるまでにフィクション、ノンフィクション、現代史、古代史など、多様な分野で創作活動を行い、これらの作品は今も多くの読者に愛され続けています。

松本清張記念館の画像

松本清張記念館 電話093-582-2761

小倉北区城内2-3 []

開所時間
9時30分〜18時(入館は17時30分まで)
休所日
月曜日(祝・休日のときは開館し翌日が休館)、12月29日〜1月3日、館内整理日
料金、費用
一般600円、中学・高校生360円、小学生240円 ※中学生以下は来年3月31日まで常設展示の入館料が無料です。

市長からのメッセージ

 松本清張記念館は今年で開館25周年を迎えます。
 松本清張が芥川賞を受賞し、44歳で上京するまでの小倉時代は、その後の偉業の基礎がつくられた時期でした。経済的事情により、高等小学校卒業後の15歳から働き始め、多くの苦労を経験しています。ところが、ポジティブな清張は逆境やコンプレックスをバネにし、持ち前の旺盛な好奇心・探求心や驚異的な挑戦意欲、天才的な努力により、82歳で亡くなるまで1000編を超える作品を書き続けました。
 私も青春時代に読んだ「或る『小倉日記』伝」などの作品にさまざまな学びを得てきました。
 記念館では、松本清張の多彩な作品世界に触れることができます。生涯現役の作家として駆けつづけた清張の生きざまを感じとっていただけたら幸いです。

北九州市長の画像
北九州市長 武内 和久

知れば知るほど、興味が広がる。「知の巨人」の多彩な魅力。

 館内では、清張の魅力をパネルやオリジナル映像、自宅の再現展示など、幅広い視点から紹介しています。

生涯の年譜 清張の生涯とその生きた時代を全長22mの巨大な年譜で解説しています。 読書室 清張の作品や関係資料が無料で閲覧できます。 書斎の再現展示 清張が作品を執筆した書斎を忠実に再現。 自宅の再現展示 清張が昭和30年代から作家活動を行った東京の自宅を再現。

SEICHO Cafe 館内探訪の合間に、カフェで一息。ランチタイムの人気メニューはアジフライカレー。 ミュージアムショップ 記念館刊行物や書籍のほか、ポストカードやTシャツなどのオリジナルグッズも販売。

主人公に重ねた清張の姿を読む

松本清張
「或る『小倉日記』伝 傑作短編集[一]」
新潮文庫刊

 1953年(昭和28年)の芥川賞に輝き、清張の名を全国に知らしめた出世作です。物語の舞台は、戦前から戦後にかけての小倉。明治の文豪・森鷗外が軍医として小倉に生きた3年間の空白を調べることに生涯をかけた主人公の人生や、彼を生涯支えた母の愛の深さを描いた短編小説です。興味深いのは、主人公に清張自身の前半生が投影されている点。作品はフィクションですが、実は清張自身のエピソードも随所に盛り込まれています。行間から、不遇な中でも地道に努力を重ねた、小倉時代の清張の姿を読み取ることも可能でしょう。魚町、鍛治町、三岳と、作中には皆さんにはおなじみの地名も登場します。「清張初心者」にもおすすめの1冊です。

学芸員 栁原暁子さん画像
学芸員 栁原暁子さん

「茶の間に語りかける歴史書」として書かれた本

松本清張
「邪馬台国 清張通史(1)」
講談社文庫刊

 女王卑弥呼(ひみこ)が治めた国とされる邪馬台国の謎に迫った作品。「学問は国民みんなのもの」と考えた清張らしく、親しみやすい日本歴史書に仕上げています。発表は1970年代半ば。当時盛んだった「邪馬台国はどこにあったのか」とされる論争に、長年の研究成果をもとに独自の視点から一石を投じ、一般の読者はもちろん、歴史学者にも高く評価されました。ミステリー作家としての顔以外にも多彩な側面を持つ清張の「古代史研究」領域の最初の1冊として、お薦めしたい作品です。この本は今なお増刷を重ね、読み継がれています。清張が目指したとおり、多くの国民の支持を得て、「茶の間に語りかける」作品となった証しとも言えるでしょう。

学芸担当主任 中川里志さん画像
学芸担当主任 中川里志さん

市制60周年記念 松本清張記念館開館25周年記念事業

(1)ミニ企画展「松本清張が君たちに伝えたかった徳川家康」

 松本清張が少年少女に向けて書いた伝記「徳川家康」を紹介し、清張が子どもたちに伝えたかったことは何かを考えます。7月20日(木)〜11月5日(日)、で。

料金、費用
入館料が必要

(2)講演会

直木賞作家・佐藤究さん画像

 講師は直木賞作家・佐藤究さん。テーマは「小説の価値と世界の黒い霧」。8月6日(日)15時〜16時30分、(リバーウォーク北九州6階)で。

定員、定数
180人

(3)特別企画展「清張福岡紀行」

 松本清張は、芥川賞を受賞した「或る『小倉日記』伝」や、晩年の「両像・森鷗外」など多くの作品の中で福岡県の風景を記しています。これらの風景をたどりながら、作品の背景などを紹介します。9月30日(土)〜12月17日(日)、松本清張記念館で。

料金、費用
入館料が必要

共通の内容

 (2)は申し込みが必要。往復はがき(4人まで)にと講師への質問(任意)を書いて7月17日までに松本清張記念館(〒803-0813 小倉北区城内2-3、電話093-582-2761)へ。ネット窓口(電子申請)も可。

>>ネット窓口(電子申請)での申し込みはコチラ

友の会募集のご案内

 松本清張の作品の知識や理解を深めるために設立された「友の会」では、講演会の開催や会報の発行などを行っており、随時、会員を募集しています。申し込みなど詳細は問い合わせを。

特典

常設展・企画展への招待、広報誌の送付、オリジナルグッズの進呈(加入年度のみ)など

年会費

  • ●一般会員:3000円
  • ●賛助会員:一口1万円から
この特集に関するお問い合わせ
松本清張記念館 電話093-582-2761

ページの
先頭へ戻る