Artist

ユキ・キハラ

Yuki KIHARA

ユキ・キハラYuki KIHARA

Sina ma Tuna シーナとうなぎ
2003 Courtesy of Yuki Kihara and Milford Galleries Dunedin

INTRODUCTION

マリエトラ王が食人を禁止した話

Fue Tagata(人だったもの);幽体

Tonumaipe'a(トヌマイペア);コウモリに救われた話

Sina ma Tuna;シーナとうなぎ

Lalava Taupou(処女のララヴァ)

日本人の父とサモア人の母をもつアーティスト。本作品シリーズは作家自ら、彼女のルーツであるサモアの「ファゴノ(神話と伝説)」の物語を演じたもので、植民地時代以前のサモアの歴史がテーマです。そしてこの写真のスタイルや色合いは、ベルベット・ペインティング(ベルベットを支持体にした絵画で1970年代に人気となった技法)で有名なニュージーランドの画家、チャールズ・マクフィー(1910〜2002年)の表現スタイルを援用し、ドラマチックな効果を生み出しています。マクフィーはポリネシア人女性を甘くセクシーに描きました。そこに興味本位で対等な人間とみない差別と偏見を読み取ることができます。この作品は、現地の人々をそのような商業的な対象としてみる植民地主義的な視点に対する抵抗と批判を表すものとしてつくられています。このようにユキ・キハラは自らの身体をメディアとして性、人種、文化そして政治の間にある搾取や蔑視の関係に異議を唱えています。

PROFILE

1975年サモア生まれ、同地在住。日本とサモアにルーツを持ち、学際的に活躍するインターディシプリナリー・アーティスト。ビジュアル・アートやダンス作品を手がけるほか、キュレーターとしても活動。その作風は、アイデンティティ政治、脱植民地化、気候変動といった要素が絡み合う差別の交差性に目を向けるとともに、支配的で一方的な歴史的ナラティブに対して疑問を投げかける。2008年にメトロポリタン美術館(米国・ニューヨーク)の近現代美術部門ライラ・アチソン・ウォレス・ウィングで、個展「Living Photographs」開催。横断的、多角的なアプローチによる芸術活動が注目され、作品は常設展示に収蔵される。 このほか、ロサンゼルス・カウンティ美術館(米国)、大英博物館(英国)、クイーンズランド・アート・ギャラリー・ギャラリー・オブ・モダン・アート(オーストラリア・ブリスベン)、ニュージーランド国立博物館などが作品を所蔵。現在、オランダ国立世界文化博物館の研究員として従事。2019年のニュージーランド芸術評議会によって、2022年開催予定の第59回ヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア)のニュージーランドパビリオン代表に選ばれる。